猫の歯石について
2021/08/21
猫の病気の一つとして恐れられている歯周病。
歯周病は猫が外科手術を受ける理由のトップになることもある病気の一つです。
そんな歯周病を予防するために、有効なのが猫の歯石取り。
そもそもなぜ歯石が付くのでしょうか? 歯石が付着することによってかかってしまう病気とは? そうならないためにはどうすればいい?
ここでは、猫の歯石にまつわる事柄についてお伝えします。
目次
猫の歯石の原因
猫に歯石が付く一番の原因は、歯のケアをきちんとしていないこと。
猫にも歯磨きが必要って知っていましたか?
というのも柔らかく口内に残りやすいペットフードは、歯垢や歯石となって歯に付着し、歯周病の原因となってしまうのです。
歯周病は、猫の手術原因のなかでもトップクラス。
歯の汚れは歯石となり、歯だけでなく、全身に影響を与えることもあります。
猫ちゃんを病気から守るためにも、歯石の付着を予防するようにしましょう。
歯石の原因として考えられる病気
歯石を付いたままにしてしまうと、以下のような病気になってしまう可能性があります。
1.歯肉炎
歯周病の初期段階として歯肉炎を発症します。
歯肉が炎症を起こして、赤くなったり、腫れたりしてしまいます。
2.歯周炎
歯肉炎が進むと、歯周ポケットの奥の組織にまで炎症が波及し、歯周炎を起こします。
歯周炎になると、歯肉から血が出るようになり、痛みで食事が取れなくなってしまうことも。
さらに症状が進行すると、歯が抜け落ちることもあります。
3.歯瘻(しろう)
歯瘻になると、炎症があごの骨を溶かし、皮膚に穴があくことも。
歯茎に穴があくだけでなく、頬の部分や口と鼻の間の骨が溶けてしまい、鼻が貫通してしまうこともあります。
そうなると顔が腫れて皮膚から膿が出て、膿の混ざった鼻水やくしゃみをするようになります。
猫の歯石の対処法
上記の病気にかかったときの対処法をお伝えします。
1.歯石の除去
まず猫ちゃんに全身麻酔をかけて、超音波スケーラーを利用し、歯石を取り除いていきます。
歯石取りの最中、グラグラしている歯や抜く必要がある歯があるときは抜歯も行います。
歯の状況によっては、レントゲン撮影を行うこともあります。
2.投薬
症状が進行しているときは、抗生剤を使っての治療も行われます。
また病気や体質などの影響で猫自身の免疫力が落ちているときは、サプリメントや乳酸菌製剤を併用することも。
重度の口内炎の場合は、ステロイド剤を使用することもあります。
3.抜歯
歯周病によって歯根がぐらついているときなどは、抜歯が必要です。
猫の場合、人間と違って歯がなくても食事にはほとんど影響ありません。
そのため、歯を抜いたあとでも、多くの猫ちゃんが痛みを感じることなく、ご飯をモリモリ食べるようになります。
4.日常的に歯のケアを行う
歯ブラシを使って、猫も日頃から歯磨きをしてあげましょう。
猫用歯磨き粉を使うと、さらに効果がアップします。
定期的に獣医に歯の状態をチェックしてもらうのもいいでしょう。
猫の歯石の予防法・歯磨きは必要か
歯石を予防するには、日常的な歯のケアが大事。
そのなかでも最も効果的なのが“歯磨き”です。
歯磨きの習慣を身につけさせるためにも、できれば子猫のときからトレーニングしておくといいです。
可能であれば毎日、少なくとも3日に1回は歯磨きができると歯石予防に効果があります。
猫の歯磨きのやり方・コツ
猫の歯磨きを成功させるコツを紹介します。
1.口に触れられることに慣れさせる
最初は、猫が口元を触られても嫌がらないよう慣れさせるところから始めましょう。
猫が好む味の歯磨きジェルを用意することで、猫がおやつの時間だと思い、歯をスムーズに触らせてくれるようになる可能性もあります。
最初はジェルを指につけ、味を覚えてもらうため、なめさせましょう。
猫がリラックスしているタイミングや遊び疲れているときなどは、とくに試しやすい瞬間です。
口周りを触ることに抵抗を感じなくなってきたら、口元をめくり歯や歯茎を触らせてもらいます。
嫌がらずに触らせてくれたら、褒めてあげましょう
2.歯磨きシートを使って慣れさせる
歯磨きシートを使っての歯磨きに挑戦します。
歯磨きシートは人の指の感触に近く、歯垢や汚れを除去できます。
まず歯磨きシートを指にしっかり密着させるようにして巻き付けます。
次に歯磨きシートを巻いた指で、歯や歯茎をやさしくタッチし、1本ずつ磨いていきます。
嫌がらずに、歯磨きさせてくれたら、こちらも褒めてあげましょう。
3.歯ブラシで歯磨きをする
歯磨きシートに慣れてきたら、本格的なブラシケアを行っていきましょう。
歯ブラシを鉛筆のように持ち、軽く小刻みに動かしていきます。
ゴシゴシ磨くのはNGです。
猫ちゃんが嫌がったら、すぐにやめることも大切です。
猫が歯磨きを嫌がるときの対処法
猫が歯磨きを嫌がるときの対処法をお伝えします。
1.液体歯磨きを使用する
歯垢分解成分などが含まれた液体歯磨きを利用するのも、一つの手。
液体歯磨きは、液体タイプだけでなく、ジェルタイプもあり、愛猫に合った方法にトライできます。
2.歯のケアをできるおやつを使う
噛むことで歯の汚れを落とせる歯磨きおやつを使って、歯のケアをするのもいいでしょう。
使い方は、歯磨きおやつを、できるだけ長い間噛むよう食べさせるだけ。
誰でもできて、簡単です。
ただし、噛んだ歯しかキレイにならないため、液体歯磨きとの併用をおすすめします。
猫の嚙み癖の直し方
こちらの記事では、猫が噛みつく理由などについてお伝えします。
可愛くてずっとかまってあげたくなる猫。
飼い主さんからしてみれば、愛情たっぷりに育てているはずなのに、なぜか急にがぶりと噛まれ「痛いっ!」という思いをしたことがある人もいるでしょう。
なぜ猫は噛みつくのか。噛みつかれたときの対処法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
歯石がついてしまったら獣医に相談しよう
猫の歯石の原因や予防法などについてお伝えしました。
猫にとっても歯は大事なもの。
歯石を放置してしまうと、全身に関わる重大疾患にかかるおそれがあります。
そうならないためにも、歯磨きなど毎日のケアを欠かさないようにしましょう。
きよかわ動物病院では、清潔な院内環境のもと、ペット一匹一匹に合った適切な処置を心がけております。
ペットの生活習慣や些細な悩みについての相談も受け付けておりますので、木更津のきよかわ動物病院へご連絡ください。
執筆者プロフィール
陣座 孝聡 / Takatoshi Zinza
獣医師 / きよかわ動物病院院長
- 北里大学 獣医畜産学部 獣医学科卒業
略歴
- 2002年 北里大学 獣医畜産学部 獣医学科卒業
- 2002~2005年 千葉県君津市内の病院にて勤務
- 2005~2014年 全国展開のグループ病院にて静岡、首都圏の病院を中心として合計3病院の分院長を務める。
- 2014年~ 千葉県木更津市にきよかわ動物病院を開業