猫のよだれや口臭がくさいとき
2022/02/12
猫がよだれを垂らしている……!
猫はあまりよだれを出さない動物なので、単なる空腹時のサインならいいですが、それ以外の病気の可能性も検討することが重要です。
ここでは、猫のよだれや口臭の原因、病気、対処法、予防法について解説。
「猫がよだれを垂らしている!!」と不安な方は、ぜひ参考にしてください。
目次
猫のよだれの原因
以下、猫がよだれをたらす理由です。
1.食事をする前
猫はあまりよだれを垂らすことのない動物ですが、お腹が空いているときにごちそうを目の前にすると唾液の分泌量が増え、
よだれを垂らすことがあります。
この場合、病気などの心配はないので、安心してください。
2.刺激物を摂取したとき
内服薬といった苦いものなどの刺激物を口にしたときも、猫は大量のよだれを分泌します。
ほかにも、ツツジやジャガイモなどを食べたときも中毒症となり、よだれを垂らすことがあります。
3.口内の痛みや異物感を覚えたとき
歯肉炎、歯周病、口内炎、外傷など口の中に異物感や痛みを感じたときに、唾液を分泌します。
高齢の猫は、特に口内に悪性腫瘍(扁平上皮がん、悪性黒色腫等)ができやすいです。
痛みや異物で口が閉じづらくなり、よだれが口の外に出てしまうこともあります。
関連記事>>猫の口の中のできものの原因・治療法
4.誤飲をしたとき
誤飲や誤食をして、固形物が喉に詰まった際にもよだれが多く出ることがあります。
喉の粘膜への刺激を抑えるために過剰によだれが分泌されるのです。
喉に詰まるだけではなく、上顎に何かしら固形物が挟まってしまうことでよだれが出てしまうことも。
よだれが垂れ流し状態になって落ち着かない様子が続く場合は、誤飲の可能性が高いと考えましょう。
最悪の場合は切開手術が必要なケースもありますので、なるべく早めに病院を受診しましょう。
5.食道炎
猫は毛繕いをする際に飲み込んだ毛玉を吐き出す習慣があります。
しかし、その頻度が多い場合は食道炎の可能性があるため要注意です。
1日3回以上の嘔吐が続いてしまう場合は、胃酸が逆流している可能性が非常に高くなります。
胃酸が逆流することで粘膜が刺激され、よだれが増えてしまうのです。
頻繁な嘔吐だけでなく、食欲不振やゲップが多い猫は食道炎の疑いが強くなります。
猫はもともと唾液が少ない動物のため、固形物を飲み込むことが苦手な動物です。
そのため、固形物のエサなどを与える際は、たっぷりの水も与えるようにしましょう。
6.熱中症
真夏などの暑い時期をはじめ、温度や湿度の高い場所に長時間いることで、猫も人間のように熱中症を引き起こすことがあります。
猫は汗をかくことができないため、体温調節がとても苦手な動物です。
脱水症状などに陥った場合、脱力してぐったりとした状態でよだれが出てしまうことがあります。
この場合は、早急な対応が必要となりますので、すぐに動物病院にかかるようにしましょう。
7.神経症状
何かしらの神経疾患を患っている際も、よだれを多く分泌することがありますので注意が必要です。
神経疾患の原因は本当にさまざまですが、代表的な症状としててんかんや脳障害などがあります。
自律神経の乱れや腎臓や肝臓の働きが悪くなることで大量のよだれが分泌されてしまうのです。
猫のよだれや口臭の考えられる病気
猫がよだれを垂らしているとき、以下のような病気が考えられます。
1.歯肉炎・歯周病
歯ぐきが赤くはれたり、炎症があったりする場合、歯肉炎などの歯周病が疑われます。
口臭がきついときも、これらの病気の可能性があります。
関連記事>>猫の歯茎の腫れの原因や治療法
2.熱中症
暑い季節などによだれを垂らしていたら、熱中症も疑われます。
風通しを良くするなどして、熱中症にならない環境づくりを心がけましょう。
3.腎不全
高齢の猫の場合、腎不全の可能性も否定できません。
老齢の猫は腎臓の機能が低下してしまい、尿中に排出されるべき物質が血中に残ってしまい、
体内にたまった毒素や老廃物が尿毒症を引き起こします。
その気持ち悪さから、よだれを垂らすようになるのです。
4.てんかん
脳の構造そのものは正常で、機能にのみ異常が起こる病気。体が硬くなる、顎をかみしめる、よだれがたくさん出る、などがみられる。
猫のよだれでこんな症状が見られたら病院へ
猫がよだれを垂らしていても、しばらく様子をみていい場合と早急に病院での受診を必要とする場合があります。
<しばらく様子を見ていいケース>
- リラックスしている状態で出るサラサラとしたよだれ
- 緊張時に出るネバネバとしたよだれ
しかし、よだれがなかなか止まらない場合や、よだれ以外に次のような症状がみられる場合は早急に病院を受診すべきでしょう。
1.口腔内の病気の可能性
歯周病や口腔炎の可能性がある場合は、次のような症状がみられます。
<口腔内の病気のチェックリスト>
- 歯茎の色が茶色く黒ずんでいる
- 口臭が気になる
- エサを食べづらそうにしている
- 食欲が低下している
歯周病を放置することで、歯茎や歯そのものを破壊するだけでなく、歯を支える骨までもろく劣化させてしまいます。食べることができずに、食欲が低下してしまうことで最悪の場合死に至ることも。歯石の除去をはじめ、定期的に口腔内の状態をチェックすることが大切です。
2.熱中症の可能性
熱中症の場合は、以下の症状がみられます。
<熱中症のチェックリスト>
- 呼吸が浅く、速い
- 嘔吐を繰り返している
- 口を開けたままよだれが垂れている
- 食欲が低下している
熱中症を放置することで、意識障害やショック症状を起こしてしまうため、早めの対処が必要です。
3.腎不全
腎臓の働きが鈍くなる腎不全にかかることでよだれが多く分泌されます。以下の症状がみられた場合は腎不全の疑いがあるので注意しましょう。
<腎不全のチェックリスト>
- 嘔吐を繰り返す
- 体重が減少する
- 口臭が気になる
- 食欲が低下している
腎不全は、高齢の猫での発症することが多く、死亡率も高い病気です。一度破壊されてしまった腎臓組織が再生することはないため、病気の進行を緩やかにしていく治療が行われます。
猫のよだれや口臭の対処法
猫が大量のよだれを垂らすようになったら、早めに病院に連れて行ってあげましょう。
特に中毒症だった場合、内容によっては命にかかわる危険性もあります。
歯肉炎・歯周病の場合は、歯垢を取り除きます。歯がひどくぐらついている場合は抜歯を行います。
熱中症の場合、まず体温を下げることが大切です。
エアコンの効いた部屋に連れていき、タオルなどで冷やしてあげましょう。
同時に、動物病院にも連絡を入れます。病院では冷却や点滴など、猫の全身の状態に合わせた対処を行ってくれます。
腎不全の場合は、回復することは難しいですが、点滴や食事療法、薬物療法などを行うことで、延命を図ります。
口腔内などの観察
口腔内をチェックして、よだれの出る原因を観察してみましょう。
歯茎の腫れや黒ずみ、歯石や歯垢の蓄積、そして口臭などが気になる場合は、すぐに病院にかかるようにしましょう。
口腔内のトラブルは、ブラッシングなどの歯のセルフケアを行うことで予防できます。
歯石や歯垢がたまらないように毎日のケアを行っていきましょう。
関連記事>>猫の歯石の原因と対処法
病院での検査
口腔内のチェックをしても異常がない場合は、内臓に問題があるケースが考えられます。
そのため、病院で詳しい検査を受けてみましょう。
病院での診療を受ける際には、口腔内の状態以外に次のポイントを伝えるようにしましょう。
<診療を受ける際に伝えるべきこと>
・体力があり元気かどうか
・食欲があるかどうか
・毛の艶
・排尿・排便の状態
少しでも気になる症状が見られた場合は、早急に動物病院を受診してください。
猫のヨダレや口臭の予防法
猫の過剰な唾液の分泌を予防するためにできることを紹介します。
1.口内のトラブルの予防
ワクチン接種や、歯磨きなどで口内を清潔にすることで、歯肉炎や歯周病などを予防できます。
歯石や歯垢が付いたままだと、口臭もきつくなります。
きちんとケアすることで、病気を未然に防いでいきましょう。
2.熱中症の予防
猫は体温調節が苦手なため、室温は27~28℃にする、水分補給がいつでもできるようにするなど対策を練っていきます。
3.腎不全の予防
猫は加齢とともに、腎臓の機能が低下しやすい傾向にあります。
定期的な健康診断を受けることで早期発見し、1日でも長く寿命を延ばしてあげましょう。
4.中毒症の予防
猫は中毒症にもなりやすいです。
予防のためにも、タマネギなどのネギ類やアサリなどの貝類、生の海産物、ブドウ、チョコレート・ココア、レーズン、コーヒー、アルコール、駆除剤、接着剤、殺虫剤などなめないようにしましょう。
植物に関しては、有害なものは700種類以上あるといわれています。
ユリなどは家に飾っただけでも中毒症になる可能性があるため、花を活ける場合は事前に問題ないか確認しておきましょう。
猫の口臭がひどい時に考えられる原因と対処法
こちらの記事では、猫の口臭の原因や対策・予防法などを紹介しております。
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猫の口のニオイが気になっている方は、こちらの記事をご覧ください。
迷ったら獣医に相談
猫が大量のヨダレを垂らすようになったら、ひとまず獣医に相談しましょう。
そのほかにも、口臭のきつさなど気になることがあれば正直に伝えます。
たかがヨダレと侮るなかれ。ときには命にかかわる重大な病気の可能性もあります。
すぐさまお医者さんに診せ、健康を取り戻しましょう。
きよかわ動物病院では、清潔な院内環境のもと、ペット一匹一匹に合った適切な処置を心がけております。
ペットの生活習慣や些細な悩みについての相談も受け付けておりますので、木更津のきよかわ動物病院へご連絡ください。
執筆者プロフィール
陣座 孝聡 / Takatoshi Zinza
獣医師 / きよかわ動物病院院長
- 北里大学 獣医畜産学部 獣医学科卒業
略歴
- 2002年 北里大学 獣医畜産学部 獣医学科卒業
- 2002~2005年 千葉県君津市内の病院にて勤務
- 2005~2014年 全国展開のグループ病院にて静岡、首都圏の病院を中心として合計3病院の分院長を務める。
- 2014年~ 千葉県木更津市にきよかわ動物病院を開業