猫の歯茎が腫れている場合
2022/03/11
愛猫の歯茎が赤く腫れているような気がする。
食事も食べづらそうだし、このまま何もせずにいて大丈夫かな?
そんな不安を抱えている方もいるでしょう。
ここでは、猫の歯茎が腫れる原因や治療法・予防法等について解説。
猫の歯茎に異常が見られたら、すぐさま適切な対応をしてくださいね。
目次
猫の歯茎が腫れる原因
猫の歯茎が腫れている要因として、以下の病気が考えられます。
1.口内炎
感染症や免疫低下などにより、口内炎が発生している可能性があります。
猫は口内炎を発症すると、よだれをたくさん垂らしたり、食欲が減退したり、口臭がきつくなったりします。
猫の口内炎はワクチン接種やドライフードを食べさせるなどの工夫で、発症確率を減らせます。
2.歯肉炎
歯周病の早期の段階。
歯肉(歯茎の表面)の部分が炎症を起こし、赤みが強くなったり、腫れたりしてしまうのです。
歯石の除去や薬の投与によって治療できます。
関連記事>>猫の歯茎の腫れの原因や治療法
3.歯周炎
歯肉炎が進行すると、歯周炎となっていきます。
歯周炎になると、歯肉からの出血や痛みが激しくなり、口を触られるのを嫌がったり、食べ方が変わったり、さらに進行すると、食事をほとんど食べられなくなります。
口臭やよだれなどの症状もさらに強くなっていきます。
猫は口の中の痛みをとくに感じやすいといわれているため、元気や食欲に大きく影響するかもしれません。
4.歯周病(歯槽膿漏)
歯垢の中に住んでいる細菌が原因で発生する歯周病は、口内の状況を大きく悪化させます。
歯周病菌が増えて状態が悪化した場合、歯槽膿漏につながってしまうケースも多いです。
歯槽膿漏とは、何らかの原因によって歯を支えている骨が溶けてしまう病気のことをいいます。
初めは歯茎の腫れが見られるようになり、さらに病状が進行した場合は歯が抜け落ちるので、早い段階で対処が必要です。
ただ歯が抜け落ちてしまうだけでなく、場合によっては口の周りの骨が溶けてしまうこともあります。
歯茎の腫れのほか、口臭やよだれが見られることも多いです。
関連記事>>猫のよだれや口臭の原因・対処法
5.外歯瘻(歯根膿瘍)
外歯瘻(がいしろう)とは、歯周病が悪化し、歯の周りにある骨が溶けて皮膚に穴が開く病気です。
外歯瘻になると非常に強い痛みがあるため、さわられるのを嫌がります。
また、痛みの関係から攻撃的な性格になる事も多いです。
ご飯を食べている時によくこぼす、よだれが増えた、顔を傾けて食べているなどの様子が見られた場合は外歯瘻の可能性があります。
皮膚が壊死してしまうケースもあり、病状が進んでからだと大がかりな治療が必要です。
歯周病が悪化して発生する病気であるため、できる限り早期の段階で気づいて治療するのが理想といえます。
猫の歯周病とは
猫の歯周病とは、歯肉炎と歯周炎の総称のことをいいます。症状や原因について解説します。
猫の歯周病の症状
初期の段階はほとんど症状がありません。
ですが、病気が進行した場合は口臭や歯茎の腫れ、よだれ、食欲不振などが見られるようになります。
できるだけ初期の段階で気づけるように代表的な症状チェックしておくことをおすすめします。
①口臭がきつくなる
猫の口臭がきつくなったと感じているのであれば、口の中で何らかのトラブルが起こっている可能性を疑いましょう。
臭いの強いものを食べた場合に一時期に口臭がきつくなることもありますが、歯周病の悪化も考えられます。
特にあまり水を飲まない猫は口の中が乾燥しやすく、歯周病の原因菌が繁殖しやすい状態です。
猫との距離が近い場合は口臭に気づきやすいのですが、そうでない場合は気付くのが遅れてしまうこともあるのでたまに確認してみてください。
関連記事>>猫の口臭がひどい時に考えられる原因と対処法
②歯が黄色く変色する
猫の歯が黄色く変色している場合、歯石が溜まっている可能性が高いです。
歯石とは、食べかすなどが原因で発生する歯垢が石灰化したもののことをいいます。
人間に比べると猫は歯垢から歯石に変わるスピードが非常に速いため、できる限り歯垢の段階で取り除かなければなりません。
歯石はざらざらしており歯垢がたまりやすいことから悪循環を引き起こします。
③歯茎が腫れる
歯周病の状態が悪化し、歯肉炎や歯周炎と呼ばれる状況になってしまうと、歯茎の腫れが見られるようになります。
歯茎が炎症を起こしている状態です。
炎症を引き起こす原因は歯周病菌なので、菌のすみかとなる歯垢や歯石が蓄積してしまうと歯茎が腫れやすくなってしまいます。
④よだれが多くなる
歯肉炎から歯周炎に進行し、病状が悪化した場合はよだれが増えます。
犬は普段からよだれがたくさん出ますが、猫の場合はそういったことがありません。
そのため、日常的によだれを垂らしているような場合は口腔内のトラブルを疑ってください。
常に口の周りが濡れているような状態である場合、早急に獣医に相談したほうが良いです。
⑤食欲がなくなる
歯周病が進行し、痛みが発生してしまうと食欲がなくなることがあります。
食事の量が減ったと感じる場合は、前述したその他の症状が見られないか確認してみましょう。
放ってしていても良くなることは期待できません。
食事量が減ると体力や免疫力も落ちてしまうことになるので、早期の判断と適切な治療が必要です。
⑥歯が抜ける
歯周病が悪化した場合、歯肉や歯周組織の炎症がひどくなり、歯をしっかり支えられなくなります。
はじめは歯がグラグラするようになり、さらに進行すると歯が抜けてしまう事も多いです。
この段階まで病状が進行している場合、
口臭が非常に強くなったり、よだれを垂らしたりするなど、前述したその他の症状も見られます。
⑦頬から膿が出る
猫の頬から膿が出る場合、歯根膿瘍が起こっている可能性が高いです
歯根膿瘍は、歯の根のほうが口内雑菌に感染することにより発生します。
歯の深い部分に膿が溜まって皮膚の下に広がり、皮膚を突き破って出てきた際に頬から膿が出るのです。
顔の腫れが短時間で悪化するようなケースも珍しくありません。
関連記事>>猫の顔が腫れる原因・病気・治療法
原因
歯周病は歯垢内の細菌が炎症を起こすのが大きな原因です。
歯や、歯の周囲にあるじん帯、歯を支えている骨に炎症が発生する場合もあります。
口内の細菌によって引き起こされるため、適切なデンタルケアができておらず、細菌が増殖してしまうことで引き起こされる病気なので注意が必要です。
きちんとデンタルケアできているつもりでも汚れが残っていることもあります。
例えば、普段缶詰を主食として与えている場合、柔らかいフードが歯に付着し、長くとどまってしまう事も多いです。
すると、食べかすをえさにして細菌が繁殖し、歯垢や歯石を作ってしまいます。
猫の口内は虫歯菌が繁殖をしないアルカリ性であるため虫歯の心配はないのですが、歯周病のリスクが高いことを理解しておかなければなりません。虫歯にならないからとデンタルケアを怠ってしまうと歯周病が悪化しやすいです。
猫の歯茎が腫れたときの治療法
猫の歯周病は以下の方法で治療していきます。
1.歯石を取り除く
猫に全身麻酔を打って、超音波スケーラーや研磨機を使って、歯石を除去していきます。
重度の歯周病の場合は、グラグラしている歯などを抜く必要も出てきます。
関連記事>>猫の歯石の原因と対処法
2.投薬
歯周病の症状が進行している場合、一時的に抗生剤を使用して細菌を抑えることもあります。
自身の免疫力の低下により歯周病を発症しているときは、乳酸菌製剤やサプリメントを併用することも。
また重度の口内炎の場合、ステロイド剤を使用することもあります。
3.抜歯
食事中痛みを感じるようになったら、抜歯をする必要が出てきます。
口の違和感も消え、抜歯後は今まで以上に食欲旺盛になったり、行動が若返ったりすることもあります。
猫の歯周病の予防法
歯周病にならないための予防法を紹介します。
1.オーラルケアを行う
歯磨きをして歯垢(プラーク)を取るといった、オーラルケアが最大の予防策です。
猫用の歯ブラシなどを使って、毎日歯磨きをしてあげるようにしましょう。
濡らしたガーゼなどを指に巻いて磨く方法でもかまいません。
磨くときはゴシゴシこするのではなく、優しくなでるような感じで。
歯垢はとくに上の奥歯にできやすいので、念入りに磨いてあげてください。
猫用の歯磨き粉を使用すると、さらに効果がアップします。
2.食事の見直し
歯石ケアのできるキャットフードやおやつの活用も効果的です。
歯石ケアのできるキャットフードは、通常のものより粒が大きくて、固め。
猫がよく噛むことによって、ブラッシング効果を期待できます。
ウェットフードは、柔らかく食べやすい分、歯に食べかすが付きやすいので細菌が付着しやすくなるので、歯石予防の観点からはおすすめできません。
歯石ケア用キャットフードは、歯を健康にするための成分が配合されています。
ただし、固すぎるフードは猫の歯や歯茎を傷つけてしまうこともあるので気をつけましょう。
猫の口の中のできものの原因・治療法
こちらの記事では、猫の口内炎の原因や症状、治療法、予防法についてお伝えします。
猫の口の中に出来物ができている。
口内炎かな? でも口内炎って放って置けば、気づかないうちに治ってるよね。そのままにしていっか。そんな風に思っていませんか?
猫にとって口内炎はとてもこわ~い病気。放って置くと、食事もできず、衰弱死しかねません。
猫の口内炎について詳しく知りたい方は、是非こちらの記事を参考にしてみてください。
猫の歯茎の腫れを確認したら、獣医に相談しましょう
猫の歯茎の腫れが見つかったら、歯周病などのサインかもしれません。
猫の歯周病は悪化すると歯が抜け落ちるだけでなく、全身に悪影響を及ぼすことも。
愛猫の健康を守るためにも、歯の状態にも注意を払っていきましょう。
きよかわ動物病院では、清潔な院内環境のもと、ペット一匹一匹に合った適切な処置を心がけております。
ペットの生活習慣や些細な悩みについての相談も受け付けておりますので、木更津のきよかわ動物病院へご連絡ください。
執筆者プロフィール
陣座 孝聡 / Takatoshi Zinza
獣医師 / きよかわ動物病院院長
- 北里大学 獣医畜産学部 獣医学科卒業
略歴
- 2002年 北里大学 獣医畜産学部 獣医学科卒業
- 2002~2005年 千葉県君津市内の病院にて勤務
- 2005~2014年 全国展開のグループ病院にて静岡、首都圏の病院を中心として合計3病院の分院長を務める。
- 2014年~ 千葉県木更津市にきよかわ動物病院を開業