株式会社きよかわ動物病院

犬の歯周病の原因や治療・予防方法

犬の歯周病の原因や治療法、予防方法

犬の歯周病について

2021/12/22

犬の口臭や歯石が気になる方も多いでしょう。それらの症状がある場合は、歯周病にかかっている可能性が高いです。 

 

犬がかかる病気の中でも最も多いのが「歯に関する病気」といわれています。その中でも今回は歯周病について詳しく解説していきます。 

歯周病をそのまま放置していると、体の中に細菌が入り込んでしまい、最悪の場合は死に至ることもあります。最悪の事態を防ぐためにも、歯周病の種類や症状、治療方法から予防法について正しく理解しましょう。 

目次

    犬の歯周病が多い理由

    犬は人間と同様、歯周病にかかるリスクが非常に高い動物です。とある保険会社の調査によると、犬は全体の75%を超える割合で歯周病のリスクを抱えていることがわかりました。

    動物も高齢化が進んでいるため、歯周病にかかる犬も年々増加しているのです。 

     

    そもそも、歯周病にかかる犬が多い理由は次の7つが考えられます。 

     

    <犬の歯周病が多い7つの理由>

    1.  歯並びの構造上、ブラッシングが困難である

    2. 歯磨き習慣のない家庭が多い

    3. 口腔内に残りやすいタイプのフードを常食としている

    4. 痛みや違和感を訴えられない

    5. 歯垢が歯石に変化するスピードが速い

    6. 毛繕いの際に口腔内に細菌が入り込むことがある

    7. 年齢による唾液分泌の減少

     

    これらが複雑に絡み合い、歯周病になりやすい環境を作り出しているのです。 

    関連記事>>犬の歯茎の腫れの治療法や考えられる病気

    犬の歯周病の進行

    犬の歯茎が腫れている時には以下の病気が考えられます。口の中の疾患は人間同様に自然に治ることはなく悪化していくだけです。

    愛犬の症状を早く楽にしてあげるためにも早急に適切な治療を受けることが大切です。 

    1. 歯肉炎

    歯周病の初期症状である歯肉炎は、歯肉、すなわち歯茎に起こる炎症反応のことです。

    歯と歯肉の隙間に付着した歯垢は歯石に変化します。歯石が歯肉をどんどん圧迫していくことにより炎症を起こしてしまうのです。歯茎の表面が赤く腫れるなどの症状があります。 

     

    人間の場合、食事から6〜8時間で歯垢に変化、その後20日ほどかけてゆっくりと歯石に変化します。しかし、犬の場合は、2〜3日で歯垢が石灰化してしまい歯石へと変わってしまうのです。 

    この石灰化した歯石の表面はとてもザラザラとしているため、歯の汚れや歯垢がつきやすくなってしまいます。そのため、石灰化した歯石を長時間放置しておくことで歯周病リスクがとても高くなります。 

     

    この歯肉炎は治療をすれば完治する病気のため、早期発見・治療がとても重要だといわれています。 

    関連記事>>犬の歯石の原因と取り方

    2. 歯周炎

    歯肉炎よりも重度な症状がこの歯周炎です。

    歯肉炎は歯肉のみの炎症を指しましたが、歯周炎は歯と歯肉の間にある「生理的歯肉溝(せいりてきしにくこう)」、いわゆる歯周ポケットと呼ばれるわずかな隙間に細菌が入り込んで起こる炎症のことです。 

     

    歯周ポケットに細菌が入り込むことで歯周ポケットがどんどん深くなり、歯肉が本来持つ歯を支える力がどんどん弱くなってしまいます。 

    歯周ポケットに入り込んだ歯垢は、正しいブラッシングを行わない限りかき出すことができません。歯周ポケットに歯垢が入り込むことで歯石が付着しやすくなり、口臭や歯肉の状態が悪化してしまうのです。 

     

    歯周炎まで症状が進行してしまうと、口腔内以外の鼻や顎などの広い範囲で症状がみられることも多くあります。

    そのため、重度の症状になってから気が付くケースも少なくありません。 

    3. 歯槽膿漏

    歯と歯肉周辺の炎症である歯周炎がさらに進行すると、今度は歯槽膿漏と呼ばれる症状が出てきます。

    歯槽膿漏とは、歯と歯を支える骨・歯槽骨の間にある歯根膜が細菌によって破壊された症状のことです。 

     

    歯根膜は、歯と顎の骨をしっかりとつなぎ合わせる役目だけでなく、噛む際にかかる力を和らげてくれるクッション材のような役割があります。

    歯周炎が悪化して、歯根膜にまで細菌が拡大すると膿を発生させ、歯と歯茎の間から膿が排出されるのです。 

    歯槽膿漏を放置することで歯肉の状態はどんどん悪化し、痩せ細っていきます。 

     

    4. 歯根膿瘍

    歯槽膿漏が進行していくと歯根膿瘍となります。

    歯根膿瘍とは、歯を支える歯根部分にまで細菌感染が広がった状態を指します。

    歯をしっかりと支えていた歯槽骨が溶けてしまうため、食事をする際の出血が増えることや歯がぐらついたり抜けたりする症状があります。 

     

    歯根部分にまで細菌感染が広がると、鼻の方まで炎症が広がっている可能性がとても高いです

    。鼻水や鼻血などの症状が続く場合は、一度病院で診察を受けましょう。 

    犬の歯周病の症状

    犬が歯周病にかかった際によくある具体的な症状についてみていきましょう。

     

    ひとつでも当てはまるものがありましたら、歯周病予備軍、もしくは歯周病を患っている可能性が高いです。

    早めの処置をおすすめします。 

    症状1|口臭がきつい

    犬の口臭がきつい主な原因は、歯周病です。食べかすが口の中に残ってしまうことで歯垢・歯石を作り出します。

    それらから発生する細菌が増殖して口臭の原因となってしまうのです。 

     

    <歯周病による口臭の種類>

    軽度…腐卵臭 

    中度…キャベツが腐ったような臭い 

    重度…魚が腐ったような臭い 

     

    このように、症状によって臭いの特徴が異なります。

    また、アンモニア臭や鼻にツーンとくるような臭いは、歯周病ではなく内臓疾患がある際に起こる症状の可能性が高いです。

     

    口臭が気になる場合は、なるべく早い段階でかかりつけ医に相談しましょう。 

    症状2|歯石がたくさんついている

    先ほどもご説明した通り、犬は人間よりも早いペースで歯垢が歯石に変化します。

    歯石が歯にこびりつくことによって、歯垢が付着しやすい環境を作り出してしまい、口腔内の状態がより悪化してしまいます。 

    歯石がたくさんついていると気づいた際は、すみやかに歯石を除去しましょう。

     

    歯石の除去は動物病院でも対応していますし、ご自宅で簡単にできる歯石ケアもあります

    。歯石取りについては後ほど詳しくご紹介します。 

    症状3|歯茎の炎症

    歯周病にかかることで、歯肉・歯茎の炎症が起こります。

    初期の歯周病でも、歯茎の腫れや赤みが出るなどの症状が確認できます。

    歯周病がどんどん進行していくにつれて赤みがどんどん増していき、腫れぼったくなります。 

    関連記事>>犬の歯茎が腫れたときの治療法

     

    症状4|歯茎から出血

    歯周病の症状が進行してしまうと、腫れた部分から血や膿が出ることもあります。

    炎症を起こした歯茎は、少し力が加わるだけで出血してしまうケースが多いです。 

     

    例えば、おもちゃで遊んでいたらおもちゃに血がついている、食事中に流血があるなど、日常生活の中で頻繁に出血することが増えてきます。

    歯周病が重度になればなるほど、出血量も多くなる傾向があるため、注意が必要です。 

     

    症状5|歯が抜ける

    歯周病が進行することによって歯周ポケットがどんどん深くなり、そして最悪の場合は歯を支える機能が低下してしまいます。

    そのため、歯がぐらつきを起こし、最終的には歯が抜けてしまうことも考えられます。 

     

    犬の歯も人間と同様、乳歯と永久歯があります。

    永久歯が抜けてしまうともちろん歯が生えてきません。歯が抜けるほどの重度の歯周病を患っていた場合は、他の合併症を引き起こしている可能性が高いため、なるべく早い処置が必要です。 

    症状6|頬から膿が出る

    目の下や頬の部分に腫れぼったい感じがする場合も注意が必要です。

    歯周病で歯槽や歯根に膿がたくさん溜まり、目や頬から膿が排出されることがあります。

    もちろん歯茎や歯根から膿が出ることもありますが、膿の溜まっている位置によっては、目や頬の方が近く排出しやすい場合があるのです。 

     

    目や顔にできた傷や腫瘍によるものだと勘違いされることが多いのですが、実は歯周病が関係しているケースもたくさんあります。

    目や頬の腫れが気になった場合も、専門の医師による診療をおすすめします。 

    関連記事>>犬の下顎が腫れた原因と治療法

     

    症状7|下顎骨の骨折

    重度の歯周病にかかってしまうことで、膿によって下顎の骨が溶けて破壊されてしまいます。

    そのため骨がとてももろく弱い状態となってしまい、少しの衝撃でも骨折してしまうこともあるのです。特に小型犬などの小さな犬でよくみられます。 

     

    骨折しているかを見分けるポイントは次の通りです。 

     

    <下顎骨が骨折している際の主な症状>

    ・口が開きづらい

    ・顎が正面からみて左右非対称になっている

    ・食べづらそうにしている

    ・食べるたびに痛みを訴えている

     

    このような症状があった場合は骨折の恐れがありますので、すぐに動物病院に受診しましょう。 

    犬の歯周病の治療法

    万が一、愛犬が歯周病にかかってしまった際の治療法について詳しくご紹介します。

    犬の歯周病治療は大きく分けて次の3つがあります。 

    治療法その1|歯石の除去

    歯周病の原因となる歯石を除去する治療法です。 

    <歯石除去の相場> 

     2〜5万円 

     

    歯石除去には、大きく分けて「麻酔を使わない治療」と「麻酔を使った治療」の2種類です。価格は、犬の大きさや麻酔の使用量や作業時間によって大きく異なってきます。 

    無麻酔で行う歯石取りを行っている動物病院もありますが、歯周病の治療の一環として歯石取りを行うには麻酔を使った方法が推奨されています。 

     

    麻酔なしでの歯石取りの主なデメリットや注意点は以下の通りです。 

     

    <無麻酔の歯石取りのデメリットや注意点 >

    ・治療に1時間前後かかるため、犬に相当なストレスがかかる

    ・動き回ることで健康な歯や歯茎、唾液腺や血管を傷つけてしまう可能性がある

    ・歯周ポケットや奥歯などの細かな部分の歯石が取りにくい

    ・除去した歯石が気道に入って肺炎を起こすリスクがある

    ・無理矢理押さえつけることで顎の骨を損傷してしまうリスクがある

    ・正しい方法で歯石取りは痛みを伴う

     

    麻酔には局部麻酔と全身麻酔がありますが、眠った状態で行う全身麻酔が一般的です。

    徹底的に汚れを落とし、歯周病リスクを軽減することができます。 

     

    麻酔に対してあまりいいイメージをお持ちでない方も多いかと思いますが、麻酔の安全性は年々高くなっています。

    どうしても麻酔を使うことに不安を感じる場合は、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。 

    治療法その2|投薬

    歯周病にかかった口腔内には多くの細菌が繁殖しているため、まずは口の中の細菌バランスを正常な状態に整える必要があります。

    炎症を抑える抗生物質や痛み止めなど、数種類の薬を処方されるのが一般的です。 

     

    薬の服用を嫌がる場合もあるかと思いますが、進行を抑えるためにも、今後歯周病にかからないためにも投薬は非常に大切です。

    用法・用量をしっかりと守って的確に行っていきましょう。 

    治療法その3|抜歯

    重度の歯周病にかかってしまうと、抜歯が必要なケースもあります。診察の際に行うレントゲン検査や触診などで、歯の温存が難しいと判断された場合は、残念ながら抜歯を行っていきます。 

    抜歯をすると抜歯箇所に穴が開いた状態となるので、それを塞ぐ処置が必要な場合もあります。抜歯は歯周病治療の中でも、最も重度の歯周病の際に行う治療方法です。

    抜歯をしないためにも、ブラッシングや歯石取りなどの日頃のケアがとても重要となってきます。 

    犬の歯周病の予防方法

    歯周病にかからないためには、日頃のケアがとても重要です。

    歯周病になってから病院で治療を受けるのではなく、歯周病にならないためにも口腔内をきれいに保っていきましょう。

     

    ここからは、犬の歯周病を予防するおすすめの方法をご紹介します。

    予防法その1|子犬のうちから歯磨き習慣を

    犬も人間と同じように、毎日の歯磨きがとても大切です。

     

    大きくなってから歯磨きをすると、不安や恐怖心を抱いてしまう犬も少なくありません。そ

    のため、小さな子犬のうちから歯磨きする習慣をつけておくことがとても重要になってきます。 

     

    歯ブラシに慣れるためには、歯ブラシを歯に当ててブラシが安全なものだと理解してもらいましょう。

    当てることができたら褒めてあげ、それを繰り返すことで歯磨きが毎日の習慣として定着します。 

     

    使用する歯ブラシは、犬用のアイテムを使いましょう

    。犬種によって使用する大きさも異なりますので、犬のサイズにあったブラシ選びが大切です。

    予防法その2|歯石がついていた時

    毎日の歯磨きをしていても、100%歯垢や歯石を除去することは難しいです。

    人間が歯磨きに加えてフロスや糸ようじで仕上げをするのと同様、犬にもプラスワンの歯石ケアが必要です。 

     

    動物病院での歯石取りは、3ヶ月から半年のペースで行うのが一般的。

    クリニックでの歯石取りまでの期間は、ご自宅で簡単にできる歯石取りを実践していきましょう。 

     

    ご自宅用の歯石取りグッズには次のようなタイプがあります。 

     

    <自宅で簡単に使える歯石取りアイテム>

    ・ハンドスケーラー

    ・歯科用ペンチ、鉗子(かんし)

    ・歯磨き粉

     

    ハンドスケーラーは、歯科医院でもよくみかける先端が細くなった歯石を取るアイテムです。

    犬の口元の皮膚をめくり、スケーラーの先端を歯に沿わせて擦っていきます。

    小さく動かしながら、カリカリと音がするように歯石を取っていきましょう。 

     

    歯石が分厚く、ハンドスケーラーでは取れない場合は、歯科用ペンチや鉗子を使います。

    ペンチなどで歯石を挟んで割り、残りの部分をハンドスケーラーで取り除いていきましょう。 

     

    犬用の歯磨き粉の中には、歯石を溶かす成分が配合されているアイテムも多く販売されています。

    毎日の歯磨きの際に歯磨き粉を取り入れることで、ご自宅の歯石取りがぐんと楽になります。 

    発見したら早めに受診

    いかがでしたでしょうか。

     

    犬の歯周病について詳しく解説しました。 

    犬の歯周病は臭いやみた目が悪くなるという変化以外にも、さまざまな部分に悪い影響を及ぼします。

    長期間放置することで、歯周病以外の病気を併発してしまう可能性も高まります。 

     

    記事の中でご紹介した歯周病の症状がみられた場合は、なるべく早めに動物病院を受診しましょう。 

     

    きよかわ動物病院では、清潔な院内環境のもと、ペット一匹一匹に合った適切な処置を心がけております。
    ペットの生活習慣や些細な悩みについての相談も受け付けておりますので、
    木更津のきよかわ動物病院へご連絡ください。

    執筆者プロフィール

    陣座 孝聡 / Takatoshi Zinza

    獣医師 / きよかわ動物病院院長

     

    • 北里大学 獣医畜産学部 獣医学科卒業

     

    略歴

    • 2002年 北里大学 獣医畜産学部 獣医学科卒業
    • 2002~2005年 千葉県君津市内の病院にて勤務
    • 2005~2014年 全国展開のグループ病院にて静岡、首都圏の病院を中心として合計3病院の分院長を務める。
    • 2014年~   千葉県木更津市にきよかわ動物病院を開業

     

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